「正常性バイアスの罠」なぜ人は災害から逃げ遅れるのか

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心理学

迫る南海トラフ巨大地震

「地震が来たらすぐに高い所に避難してください」

そう言われても、多くの人が実際の場面で避難せずにとどまってしまいます。

●「なんだかんだで、どうにかなる」

●「津波がここまでくるはずがない」

そう思ってしまうのは、あなたのせいではありません。

それは、私たちの“心のクセ”がそうさせているのです。

今回は誰もが陥る心の仕組み「正常性バイアス」についての解説です。

 「正常性バイアス」とは

心理学では、危機的な状況に直面したときに

「これは異常なことではない」と思い込もうとする心理を「正常性バイアス」と呼びます。

これは、人間の脳がショックや混乱から自分を守るための無意識の防衛反応です。

もっと分かりやすく一言でまとめると…

「異常」を「正常」に見せて、心の混乱を防ごうとする脳のクセです。

しかし、この心の働きが災害時には“命取り”になることがあります。

南海トラフ地震と津波避難の現実

南海トラフ地震では、数分〜10分以内に津波が到達する地域が存在します。

つまり「揺れが完全に収まってから考える」では遅すぎるのです。

しかし、正常性バイアスが働くとこう考えてしまいます。

●「この揺れは大したことない」

●「逃げるほどのことではない」

●「みんなも逃げていないし」

このような思い込みが、避難のタイミングを数分単位で遅らせてしまう。

それが、南海トラフのような“即時行動が命を分ける災害”では特に危険なのです。

 あなたも無関係ではない。むしろ“誰もが陥る”

正常性バイアスは、決して「鈍い人」や「危機感のない人」だけの問題ではありません。

むしろ、すべての人に当てはまる自然な心理現象です。

過去の大震災でも、多くの人が

●「本当は逃げた方がいいとわかっていたけど、体が動かなかった」

●「周りが逃げないので、自分も様子を見てしまった」

と証言しています。

これには「同調バイアス(周囲に合わせて行動してしまう心理)」も関係しており、

一人で判断することの難しさも影響しています。

どう備えればいいのか?

大切なのは「心のクセを知った上で、準備しておくこと」です。

●「揺れたら高台へ」など、即行動できるルールを家族で決めておく

●周囲が動かなくても、自分が動き出せる勇気をシミュレーションしておく

●地域のハザードマップを見て、避難経路と所要時間を具体的に確認しておく

災害への備えは、モノだけではなく、“心の癖”との対話でもあるのです。

心のバイアスを「責める」のではなく「知る」

「なぜあの時、逃げなかったのか」

これは、災害のたびに繰り返される問いです。

でもそれは、無責任だったからでも、怠けていたからでもありません。

私たちの心が“異常を普通に見せようとする”という、本能的な働きによるものです。

そのことをあらかじめ知っておく――

それだけで、いざというときに“命を動かす判断”ができる可能性が高まります。

心の準備は、誰にでもできる

地震はいつ起きるか分かりません。

でも、非常時にどんな心の動きが起こるかを知っておくことは、今すぐにでも始められます。

自分の心のクセに気づき、

「それでも私は、逃げる!」と決めておくこと。

どんな場所でも、地震が起きた時を想定しシュミレーションしておくこと。

それが、未来のあなた自身や大切な人の命を守る「心の防災訓練」になるのです。

 

最後まで閲覧いただきありがとうございます!

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資格:公認心理師

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