痛ましい事件
2016年に神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で悲惨な事件が発生しました。
植松容疑者が、施設の利用者(障害者)19名を殺害しました。
この事件は日本社会に深い衝撃を与えただけでなく、障害者に対する偏見や差別、そして加害者の心理背景についての議論を呼び起こしました。
今回の記事では、心理学的観点からこの事件を考察し、関連するエビデンスや理論をもとに解説します。
加害者の心理的背景
植松容疑者は事件前に
「障害者は不幸しか生まない」という考えを公言していました。
このような考え方や行動には、以下の3つような心理的要因が関与している可能性が考えられます。
①優生思想
植松容疑者の発言と行動は、優生思想に基づいていると考えられます。
優生思想とは、特定の人々を「劣った存在」と見なし、排除や制限を加える考え方を指します。
こうした思想は、歴史的にナチス・ドイツの障害者安楽死政策などで見られたように、差別や大量虐殺につながる危険性があります。
②認知の歪み
彼の主張には、偏見に基づく認知の歪みが見られます。
●過度の一般化: 「障害者は社会にとって役立たない」といった偏った認識を持つことで、自分の考えを正当化しやすくなります。
●帰属の誤り: 障害者の存在を「不幸の原因」と決めつけ、問題を他者に投影しています。これにより、自身の責任感や内的葛藤を回避しようとする心理が働いた可能性があります。
③パーソナリティ特性
事件前の行動や発言から、反社会性パーソナリティ障害(ASPD)の特徴が疑われる側面があります。ASPDは、他者への共感能力の欠如、規範に反する行動、攻撃性を特徴とします。
社会的背景の影響
この事件は、個人の心理的問題に加えて社会的な要因とも関連しています。
①障害者差別と社会的偏見
日本社会において、障害者に対する偏見や差別が依然として存在しています。
2016年の内閣府の調査によれば、約40%の人が障害者に対する偏見を感じたことがあると回答しています。
このような社会全体の風潮が、植松容疑者のような過激な思想を助長した可能性があります。
② 孤立と過激思想
植松容疑者は事件前に職を失い、孤立していました。
孤立は、他者との接触を減らし、極端な思想に影響を受けやすくするリスク要因とされています。
過去の研究では、孤立と過激行動には相関があることが示されています。
加害者心理と大量殺人の特性
心理学的研究では、大量殺人犯にはいくつかの共通点が指摘されています。
●目的意識: 犯人は自分の行動を「正当化」する信念を持っていることが多い(Levin & Madfis, 2009)
●脱人間化: 犯行前に被害者を「人間」と見なさなくなるプロセスが働くことがあります(Bandura, 1999)植松容疑者も障害者を「いない方が良い存在」として扱い、彼らの人間性を否定する発言を繰り返していました。
●怒りや恨みの蓄積: 自分の不満を他者や社会に投影し、その解決方法として暴力を選ぶケースがあります。
まとめ
植松容疑者による事件は、個人の心理的問題に加えて、社会全体の偏見や支援体制の不十分さが絡み合った悲劇です。
心理学的な視点からは、優生思想や認知の歪みが事件の根底にあると考えられます。
この事件をきっかけに、障害者の人権や共生社会についての理解を深めることが求められます。

「命の価値を選別する思想」が生むのは優れた社会ではなく分断と悲劇だけです。守るべきは強者の理屈ではなく、すべての命の尊厳です。
最後まで閲覧いただきありがとうございました!
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